top of page
アレルギーってなに?

 人の体には、ウイルスや細菌など有害なものが侵入してきた時に、それらを排除しようする免疫反応という仕組みがあります。この免疫反応がさほど害がないものに対しても過敏に働いてしまい、なんらかの症状が出現することをアレルギーと言います。アレルギーは広く言うと体質のひとつですが、お薬によって症状をやわらげる、また、近年では経口免疫療法、舌下免疫療法といった体質そのものを変える治療も積極的に行われています。

アレルギー疾患について

アレルギーによっておこる主なものは、

気管支喘息

アレルギー性鼻炎(花粉症など)

・アレルギー性結膜炎

アトピー性皮膚炎

食物アレルギー

・じんましん

などです。症状の程度は人によって違います。

気管支喘息

 気管支喘息とは、アレルギーによる慢性の気道炎症がある状態です。そこに風邪などの感染症、ダニ、ペットの毛、たばこ、天候、運動、ストレスといった刺激が加わることで、ぜいぜい、ひゅーひゅーという喘鳴(乳児ではぜろぜろ、ごろごろと聞こえます)、咳が出現し、呼吸が苦しくなる喘息発作が引きおこされます。体質ですのでくり返すのが特徴です。乳児ではRSウイルスなどの感染症でも区別のつきにくい症状が出ることがあり、診断がむずかしいため、小児アレルギー学会のガイドラインでは、”気道感染の有無にかかわらず、明らかな呼気性喘鳴を3エピソード以上くり返した場合には喘息と診断する”とされています。

 また、はっきり喘鳴がなくてもアレルギーの炎症が起きていて咳が続く咳喘息などといった病態もあります。

予防薬の継続が必要な場合

1週間に1回未満で、月に1~数回の発作が見られる場合

(軽症持続型)

1週間に1回以上の発作が見られる場合

(中等症持続型)

が予防薬の継続投与を始める目安です。それ以上の発作が見られる場合はより早急な対応が必要です。3ヶ月程度1回も発作が見られなければお薬を減量、または中止にします。現在ではステロイド吸入薬の投与期間を減らす試みもあります。

喘息の人の気道の模式図

ここが知りたい小児喘息Q&A(環境再生保全機構)より転載

抗炎症作用

(発作予防効果)

気管支拡張作用

(発作治療効果)

喘息治療薬の種類と作用

ロイコトリエン拮抗薬

オノン® 、キプレス® 、シングレア®

++

吸入ステロイド薬

パルミコート®  、オルベスコ®など

+++

テオフィリン製剤

ユニコンCR®  、テオドール®など

++

吸入β2刺激薬

メプチン®

+++

気管支喘息

pMDIについて

症状によってはpMDIが処方されることがあります。

pMDI
pMDI

 

※他にも様々なpMDI(加圧式定量噴霧式吸入器)があります。

ご使用方法はリンク先の動画などを参考にしてください。

メプチンエアー®

オルベスコ®

スペーサーについて

ご年齢によってはpMDIの吸入にスペーサーの補助が有効です。

スペーサーの写真

新生児~18ヶ月齢児用

1歳~5歳児用

5歳以上のお子さん用

※他にも様々なスペーサーがありますが、

日本小児アレルギー学会が推奨しているのは

このエアロチャンバー・プラスのみです。

外部サイトにてお薬や機器の使用方法をご視聴いただけます。

pMDIの使用方法
pMDIの使用方法
pMDIの使用方法

吸入器について

ご家庭に吸入器の購入をお勧めする場合があります。

ネブライザーの写真

オムロンNE-C28

※他にも様々な吸入器があります。

ご使用方法は吸入器の説明書をお読みの上、右の動画を参考にしてください。

外部サイトにてお薬の使用方法をご視聴いただけます。

ネブライザーの使用方法
ネブライザーの使用方法

※パルミコート吸入液は他の吸入液と混ぜないでください。

※メプチン吸入液とインタール吸入液は混合して使用してください。

アレルギー性鼻炎

 アレルギー性鼻炎とは、アレルギーによるくり返すくしゃみ、水ばな、鼻づまりを特徴とします。通年性アレルギー性鼻炎(多くはダニが原因)と、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症とほぼ同意義)に分けられ、後者はアレルギー性結膜炎を合併していることがあります。いずれも症状の程度には個人差があります。花粉症では、花粉が飛び始める2週間前から加療を始めるとより効果的だと言われています。鼻づまりがひどく慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)の合併が考えられる場合は、それに応じた治療が必要です。

カルボシステイン®など

気道粘膜修復薬

+++

+++

アラミスト®など

点鼻ステロイド薬

++

ザイザル® 、アレロック®など

抗ヒスタミン薬

鼻炎治療薬の種類と作用

鼻詰まりを

やわらげる作用

鼻水を

抑える作用

ロイコトリエン拮抗薬

オノン® 、キプレス® 、シングレア®

アレルギー性鼻炎

アラミストの使用方法をご視聴いただけます。

自由に画像を

印刷してご使用

ください

アレルゲン免疫療法ナビへのリンク画像
シダキュアとミティキュア.png

当院ではスギ、ダニアレルギーに対する舌下免疫療法を行っております。対象は12歳以上の方のみです。

アトピー性皮膚炎

 この項目は特に大事な部分です。というのも、アトピー性皮膚炎については、ことステロイド軟膏の外用についての情報のばらつきが大きく、かなり専門的と思われるものでも間違った情報が発信されていることがあるからです。どんな薬でもそうですが、軟膏も適切に使用されて初めて効果が発揮されます。また、効果の乏しい場合は次の対策へすみやかに切り替える必要があります。どんな治療方法も患者様のご納得があって初めて成立するものですので、様々な情報があって混乱しやすい乳児湿疹やアトピー性皮膚炎については、特に説明努力と情報提供を心がけております。どうかご参考にしていただけたらと思います。

 アトピー性皮膚炎は、日本皮膚科学会から「増悪・寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。つまり、良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚のかさかさやただれ、じゅくじゅくがあり、体質が関係しているということです。ダニやハウスダストなどのアレルギーが関与している場合もあれば、はっきりした原因を特定できないこともあります。年齢とともに改善していくことが多いですが、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎を初期に完全に区別することは困難です。数ヶ月以上治療が必要なくらい症状が長い、あるいは明らかに程度が強い場合にはアトピー性皮膚炎を考えます。

アトピー性皮膚炎の仕組み

 アトピー性皮膚炎では、体質によってもともと皮膚バリアの機能が低下している状態で、水分が逃げていきやすいために乾燥しやすく、また、異物の侵入を許しやすいために炎症が起きやすい状態になっています。保湿剤によって低下した皮膚バリアの機能を補うのが治療の基本となります。

バリアが低下している皮膚の模式図

※アトピー性皮膚炎ドットコム(NOVARTIS)より転載

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の治療薬

アトピー性皮膚炎の治療の基本は保湿剤です。しかし、ひとたび炎症が起きてしまうと保湿剤だけでは中々改善しないことがあります。

その時に使用するのがステロイド軟膏です。ステロイド軟膏には強さがあり、症状の程度によって適切に使い分けることが大事です。

保湿剤

ワセリン、プロペト®

ヒルドイド®

肌を保護する作用はありますが、保水効果はあまりありません。

保湿剤の基本となる薬剤です。新生児からお使いいただけます。

じゅくじゅくがひどい、あるいは出血している場所への塗布は避けてください。

ステロイド軟膏

Ⅳ群

(ミディアム)

Ⅲ群

(ストロング)

キンダベート®

リドメックス®

ボアラ®

効果は比較的弱いタイプです。赤みやかゆみの強い部分にまず用います。

この強さのものは1日2回から一気に中止にすることもあります。

効果はやや強いタイプです。キンダベートが無効の場合に使用を検討します。

手など皮膚の分厚いところ、炎症が強い場合、貨幣状湿疹、苔癬化している部分には、

最初から使用を考慮します。

中止する際には、徐々に減量して再燃がないことを確かめる必要があります。

Ⅱ群

(ベリーストロング)

アンテベート®

効果は小児科で一般的に使用できるものの中でもっとも強いタイプです。

適切にストロングクラスの軟膏を使用し、保湿剤や抗ヒスタミン薬を併用しても、

改善が乏しい時に使用を考えます。

症状にもよりますが、3日から5日間使用しすみやかに減量、または軟膏を切り替えます。

免疫抑制剤

プロトピック軟膏®

顔や首の湿疹に対してストロングクラスの軟膏が無効の場合などに使用を考慮します。

最初にほてりや刺激感が出ることがあります。

抗ヒスタミン薬

ザイザル®、

アレロック®など

かゆくてひっかいてしまうと湿疹は治りが悪くなります。

必要に応じてこれらのかゆみ止めを併用することがあります。

※これらは当院で使用している薬剤で、他にも様々な軟膏や内服薬があります。

軟膏を使う時の注意点

 ステロイド軟膏は必要最低限かつ充分な強さのものを使用するのが原則です。症状の程度によっては、1歳にならないお子さんでもベリーストロングクラスの軟膏が必要になることもあります。1週間塗布しても効果がない場合はお薬の切り替えが必要です。漫然と長期間塗り続けることがないよう調節させていただきます。

 軟膏を塗る量は、FTU(finger tip unit)という単位を参考にしてください。25gチューブと5gチューブではチューブ口径が違いますので、1FTUの量が変わってきます。注意してください。比較的長期の治療が必要と思われる方には、下記の説明書きに塗る回数と期間を記載した用紙を合わせてお渡しさせていただいています。

資料室からも

ダウンロード

できます

軟膏の塗り方

外部サイトで保湿剤の塗り方をご視聴いただけます。他の軟膏の塗り方も基本的には同様です。

保湿剤の塗り方へのリンク画像

食物アレルギー

 食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されます。つまり、特定の食べ物(食べる、触れる、吸い込むなどを問わない)によって生じる免疫反応で、その人にとって良くない症状が出現することという意味です。具体的には、口もとの赤み、のどの違和感、蕁麻疹などで、ひどいとアナフィラキシーを生じることがあります。離乳食の時期に蕁麻疹などが出現して気付かれることが多いです。成長とともに症状が出にくくなることがあり、耐性獲得(アウトグロー)と呼ばれます。食品によって耐性獲得のしやすさが異なり、一般的に鶏卵、牛乳、小麦、大豆は耐性がつきやすく、ナッツ類、甲殻類、魚類、果物は耐性がつきにくいと言われています。しかし、中には成長とともにアレルギーの出る品目が増えていく人もいます。

食物アレルギー
食物アレルギーの原因食品のうちわけ

「食物アレルギー診療ガイドライン2012」より引用

原因食品のうちわけ

どんな症状が出るの?

アレルギー症状の一覧

 原因となる食品を食べた後に運動することによって症状が出る、食物依存性運動誘発アナフィラキシーというものがあります。食べただけ、運動しただけでは症状は出現しません。

 また、花粉に含まれるアレルゲンが果物や野菜に含まれるたんぱく質と似ており、花粉症の人が特定の果物、野菜を食べると口の中がぴりぴりする、かゆくなったりするといった症状が出ることがあります。これを口腔アレルギー症候群(OAS)といいます。

「ぜんそく予防のために食物アレルギーを正しく知ろう(環境再生保全機構)」より転載

どうやって診断するの?

 まずは上記のような症状の聞き取りから食品に対するアレルギーの可能性があるかどうかを検討します。例えば、蕁麻疹はアレルギー症状の代表的なものですが、食べ物のせいばかりでなく体調の具合や様々な原因でできます。特定の食品や物質によるアレルギーが疑われた場合、採血でアレルギーの反応の程度を見ることができます。他に食物負荷試験といった方法もあります。食物負荷試験では食べられる量も知ることができます。詳しくはアレルギー検査についてをご覧ください。

食品表示について

◆食品表示の義務があるもの(特定原材料7品目)

 卵、乳、小麦、そば、ピーナッツ(落花生)、えび、かに

◆表示が推奨されているもの(特定原材料に順ずるもの20品目)

 あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、ゼラチン、大豆、鶏肉、

 バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご

※飲食店(レストラン、ファーストフード店など)、量り売りのお惣菜、店内で調理する(加熱も含む)お弁当やパンなどはアレルギー

 物質の食品表示制度の対象外です。

※包装容器の表面積が30cm2以下の小さなものには表示義務がありません。

経口免疫療法について

 体には異物に対して免疫反応を過剰に起こさせない(アレルギー反応を起こさせない)ようにする、免疫寛容という仕組みがあります。免疫寛容は口から入る異物に働きやすいと言われており、その仕組みを利用した治療法が経口免疫療法です。経口免疫療法は、まず食物負荷試験でアレルギーが出ない基準となる摂取量を決定し、徐々に体を慣らしながら食べられる量を増やしていく、「食べて治す治療法」です。食物負荷試験はリスクを伴う検査なので一般的には入院して行う方が安全であることと、経口免疫療法中に強いアレルギー反応が急に起こってしまうことも考えられるため、経口免疫療法をご希望の場合は近隣の中核病院へご紹介させていただきます。

アレルゲン感作の模式図

「食物アレルギーは肌の湿疹から始まる 乳児期から保湿を」

​日経ヘルス&メディカルより転載

 口から入った異物は免疫寛容が働きやすい反面、皮膚から入った異物はアレルギー反応がおきやすいと言われています。湿疹ができやすいお子さんは、乳児期から肌の保湿を心がけていただくと、アレルギー発症のリスクを下げられると言われています。

​ 子どものアレルギーの発症を避けるために、妊娠中・授乳中に卵や乳製品を避ける方がおられますが、完全に避けてしまうと免疫寛容の働きを弱め、むしろアレルギーの発症を増加させてしまう可能性、また、母親、赤ちゃんともに深刻な栄養不足になる可能性があることから、現在では不必要な食物除去はすべきでないと考えられています。

自己注射薬の写真

当院ではエピペンを処方できます(院外処方)。

下記から外部サイトでエピペンの使用方法をご参照いただけます。

自己注射薬の使用方法
bottom of page